過体重の男性は減量によって男性ホルモンのテストステロンの分泌を改善できる可能性が、アイルランドで行われた介入試験によって示唆されたそうです。これはセント・ビンセント大学病院(ダブリン)教授のFrances Hayes氏らによる研究で、ヒューストンで開かれた米国内分泌学会議年次集会(ENDO2012)で報告されました。
体重とテストステロンの関係
研究は、中年で過体重、かつ糖尿病前症のアイルランド人男性約900人を対象とし、低脂肪・低カロリーの食事と週に150分以上の運動を行う群(生活習慣改善群)、糖尿病治療薬のメトホルミンを服用する群(薬物治療群)、プラセボ群のいずれかに割り付けて1年間追跡しました。
その結果、生活習慣改善群ではテストステロンの値が低かった男性の割合は20%から11%に減少した(分泌が改善していることが示唆された)そうですが、他の2群では変化がないことがわかりました。テストステロンは、勃起や性的欲求などの性機能にも関わる男性ホルモンで、過体重だと分泌が低下すると言われています。
ホルモン療法に頼る前にまず食事と運動で減量
この結果について「過体重でテストステロン値が低い男性を診る場合は、ホルモン療法に頼る前にまず食事と運動で減量するよう努力を促すべきだ」とHayes氏は同学会のニュースリリースで述べています。
また、生活習慣改善群では体重が平均7.7kg減少したことから、「減量は糖尿病前症から糖尿病に進行するリスクを低減するだけでなく、男性ホルモン分泌能を増強させる効果もある」と結論している。
今回のデータおよび結論は学会発表時のものであり、ピアレビュー(研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証)を経た医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされるとのことです。また、同研究では減量とテストステロン高値の関連を確認したが、減量がテストステロン値を上昇させるという因果関係は証明していないようですので、今後の研究結果が待たれるところです。