- 人物紹介:順天堂大学医学部附属 順天堂医院 医学博士 久末伸一
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順天堂大学医学部附属 順天堂医院で「メンズヘルス外来」、また、メンズヘルスクリニック東京にて男性更年期(LOH症候群)に取り組んでおられ、メンタル、性機能あらゆる分野で悩む男性患者さんのために日々向き合っておられます。
メンズヘルスクリニック東京
http://www.menshealth-tokyo.com/
順天堂大学医学部附属 順天堂医院
http://www.juntendo.ac.jp/hospital/
女性が知りたいパートナーのED事情 vol.2
第1章 若い層と中高年層どちらのED患者さんが多い?- 第2話
三松真由美(以下、三松):さてさて、私が最近感じていることですが、私のところに相談に来られる方というのは、圧倒的に30代40代の方が多いんです。旦那さんのEDによるセックスレスで悩む奥様がたです。世の中的には「ED=おじさまの症状」という見方だと思うのですが、私はそうは思えないんです。
久末伸一医師(以下、久末):ああ、そうですか。
三松:20代の若い男性でも途中で中折れすることで悩んでいる人はいますよね。
久末:ええ。
三松:それ、もしかしたら心因性のEDかもしれないですから泌尿器科へ行ったほうがいいですよ、というようなアドバイスをすることが多くて。私からすると、昭和大学の佐々木春明先生が研究されている若年性EDの方々は少なくないと思うのです。
最初から出来ない人とか、途中から出来なくなる人が20代後半から30代に存在します。結局そのパートナーも同世代の若い女性ですから「うちの彼がセックスしようとしません」とか「彼が硬くならないから求めても拒否されます」とか「うちの夫がEDなんですけど、病院へ行きなさいと言っていいものなんでしょうか?」というような悩みが非常に多いんですね。
久末:なるほど。
三松:私としては50代以上のおじさま世代にならなくとも30代とか、そのまだ若い方々のEDが増えているなという印象なんですよね。
久末:いや、仰る通りです。私もやっぱりそういった印象ありますね。ですから僕のところに来て治療を受けたいという方は、そのなかでも更に重症といいますか。「子供を作るために性行為を完結させねばならない」という患者さんです。
不妊治療という目的がちゃんとあって、その目的があるがゆえに何とかしなければいけないっていうことで治療を求められて来る方がほとんどです。
多分その一歩手前の方というのは、きっともっといらっしゃるんでしょうね。
三松:それはそれはたくさんいますね。で、そういう方々っていうのは泌尿器科に行くこと自体がなかなか敷居が高いわけです。自分にとっては特に困る症状ではないと。しなければいいわけですから。
子供を作るという目的と、パートナーと愛を深め合う目的とは似て非なるもので、後者は「まあいいか」と後回しにされやすいのです。女性としては寂しい限り!
久末:そうですね。泌尿器科にくるのは敷居が高いというのがありますから。
三松:今はどうですか?その、勃起障害で泌尿器科に来る患者さんっていうのは増えていますか?子供を作る理由でなく。
久末:勃起障害の治療のために泌尿器科に来る患者さんですか?
三松:ネットとか通信販売でED治療薬を購入しようとしてしまう人も多いようです。
EDを病気と捉え、ちゃんと治そうと思って泌尿器科に来るという、「勇気ある方」と言いますか。パートナーのためにもという患者さんです。
久末:いや、やはりですね、今実は僕が治療を行っている場所が、大学病院での外来と、あとはこういったメンズヘルスクリニックと2つの場所がメインですから、大きく患者さんの層が違うんですね。
三松:違いますか。やっぱり。
久末:はい。大学病院の方はですね、高齢の方が多いですね。
男性更年期の患者さんも、大学病院のほうは年齢層の高い方が多いです。平均年齢だいたい55歳です。メンズヘルスクリニックの方は「ドック」という形でやらせて頂いていまして、これの目的は、今の自分の男性力ってのはどうなんだろう?というのを気軽にチェックしに来てもらおうという目的で「ドック」という形にしているんですけども、このようなクリニックの場合ですと男性更年期の患者さんも含めて平均年齢だいたい48歳くらいです。
やはり7歳くらい若いんですね。
三松:はい、なるほど。
久末:ですからそういった意味では、こちらのようなクリニック(メンズヘルスクリニック東京)のほうが気軽に来れるという環境なんじゃないかなと思いますね。
なので、こちらのようなクリニックであれば、そういった若くて勃起機能がうまくいかなくて、という患者さんが多い気がしますね。やはり大学病院で治療を受けるいうのは敷居が高いと感じられる方が多いです。
EDの症状で大学病院に行っていいものなんだろうか?とか、そういった意識はやはりあると思いますね。
三松:そうでしょうね。私は圧倒的にEDのパートナーを持つ女性からの相談を受けているのですが、彼がEDかもしれない、旦那さんがED気味という場合に、本当は病院に行ってほしいんだけれども、それを言うと旦那さんが嫌がるとか、プライドを傷つけるようでぎくしゃくする。治療して欲しいのに、どうしたらいいんでしょうか?っていう相談をいただくんです。
夫婦間のメンタル面というのは非常に悩ましいところなんですけども、そういった女性の方々からの問いにはどういう風に言えばいいんでしょうね?
久末:これが答えになるかどうかは分からないんですけれども、カップルの関係のなかで、男性更年期の患者さんで診療に来られる方というのは、奥さんが旦那さんを引っ張ってこられる方が多いんですよね。で、僕はやはりパートナーとの関係のなかで、テストステロン(男性ホルモン)は重要な役割を果たすと思います。「男性ホルモン値を上げる」というのがですね、いろんな意味でご主人と奥様との関係を良くしたり、性生活をよくしたり、そういった関係を良くしていくキーファクターになるんじゃないかと思っているんですよ。
三松:私が最近注目している『男性ホルモン』というものですね。
久末:その「テストステロンを上げる」っていうことだけで考えていくと、奥様の行動パターンというのは、いくつか推奨されるものが浮かび上がってくるんですね。
三松:はいはい。興味津々です。推奨してください!私にも(笑)
久末:ひとつは、ご主人にですね、ストレスを受けるようなことをしないということですね。テストステロンというのは「勝者のホルモン」と言われていまして、勝ったときに上がるんですね。逆に負けたと感じるときには下がるんですよ。ですから、ご主人に批難めいた言葉を言いますと、ご主人は負けたと感じるんですね。
先程、プライドの話が出ましたけどそれと同じで、そういったことを感じるとご主人のテストステロンは下がりますので、それは「性交をしたい」という性欲の低下にもつながりますし、勃起障害にもつながると思うんですね。
三松:はい・・・。
久末:ですから基本的にはご主人を、誉めて誉めて誉めちぎってほしいんですね。とにかく、陰茎のサイズでもいいですし、例えばクンニリングスの気持ち良さでもいいです。
とにかくご主人を誉めて誉めて、それでご主人のテストステロンを上げてあげると。
三松:なるほど。日常的にパートナーを褒めることは、自分の著書の中でもよく書くんですけれども、性交中も褒める事を忘れずにしなければですね。
久末:おっしゃる通りです!
三松:日常は、奥様が家庭や夫を仕切る事が多いのですが。とにかく一歩下がって、夫を立てろと。
それこそもう演歌の歌に出てくるように「あなた一筋です。あなたなしでは生きてゆけない」くらい、立ててくださいと言っています。
「あなたが働いてくれるから家族も私はこんなに幸せにいられるんです」っていうことを、日常から言わないと。
久末:はははは。素晴らしいですね~~。
三松:セックスのときだけ「ペニス気持ちいい」とか言っても、それじゃダメなんだ!っていうのを、結構、私、提言しています。
久末:素晴らしい見解です!
三松:そうすることでテストステロンを?
久末:上げます!ですからやっぱりですね、実際そういった二松先生のように、洞察力のある方というのは肌で感じているんだと思うんですよね。
そういうことでいえば、本当に昔の人は凄いなと感じるんですけれど、例えばですね、栄養管理ということでいえば、ニンニクですとか玉ネギ・長ネギ・ニラといった男性の好きなニオイの強い野菜というのはちゃんと科学的根拠があって、テストステロンを上げるんですね。
三松:ほほう。
久末:これらの食材にはアリシンという物質が含まれていまして、このアリシンていうのがテストステロンを上げてくれるんですけれども、単独で炒め物とかをしてしまいますと、壊れてしまうんですアリシンが。
三松:あああ、残念です。
じゃあ、玉ネギだったら生でスライスしてドレッシングでいただくとかがよいですか?
久末:本当はそうなんですが、ただ、それはやっぱり食べづらいですよね。苦いですから。
で、じゃあどうしたらいいかっていうと、実はビタミンB1とくっつくと、アリチアミンという熱に強い物質に変わるんです。
三松:アリチアミン!
久末:はい。で、このビタミンB1が多く含まれているのが、実はお肉なんですね。
三松:ということは、肉と玉ネギを一緒に、ということですか?
久末:そうですそうです。おっしゃる通りです。ですから簡単に言うとお肉、とくに牛肉なんかにはビタミンB1と亜鉛も含まれていますからなお良いんです。
僕いま難しいことたくさん言いましたけど、簡単に言いますと餃子ですとかレバニラ定食ですとか、焼肉にニンニクたっぷりとか、ホントに男の人が好きなも食べ物というのはテストステロン上げるものなんですよ。
三松:そうなんですよね!
久末:スタミナ料理って言われているものはみんなそうなんですよ。多分ですね、昔の人はしっかり観察をしていて、これ食べると元気になるなっていうのを分かっていたんだと思うんですよね。
それがテストステロンを上げていたんだと思うんですよね。
三松:やった!!久末先生、私と一緒に、レシピの本を企画いたしましょう。
久末:ああ、良いですね(笑)
三松:精力増強料理、またの名を「勃起を促す料理」またの名を「性欲を醸し出してもらう料理」わからないですもん主婦は。
ニンニクと生卵、あるいは牡蠣という漠然とした知識しかないです。
久末:だから昔からよく言われるように、「あなた、今日はOKよ」というな時には餃子をつくるとか、別にあれは全く根拠がないワケじゃないと思うんですよね。
餃子なんか、中にニラも入ってますしキャベツも入ってますし、キャベツなんかは亜鉛も非常に豊富ですしね。
三松:なるほどなるほど。
久末:お食事でご主人のテストステロンを上げて、というのは奥様ができる事のひとつかもしれませんよね。
三松:スタミナ料理が良いと、いうことですよね。それがテストステロンを上げると。じゃあ、テストステロンの血中濃度を測ったら上がっているワケですね?
久末:そうです。そういった実験もありますので。
三松:実験があるんですね?証拠が。証拠さえあれば出版できますよ!(笑)
では、ちょっと整理しますね。男性ホルモンは勝者のホルモンだから、ホルモン値を上げるためには誉めること、栄養管理が大切。あとは?
久末:これはちょっと話が別かもしれないんですけども、お酒はですねテストステロンを激烈に下げるんですね。
三松:お酒はダメなんですか。
久末:はい。お酒は良くないんです。ボジョレーも解禁になって耳の痛いお話なんですけども、お酒だけは良くないんですね。ただ、コミュニケーションの潤滑油という意味で、少量でしたら問題ないと思うんですけどね。
しかし、こんな実験もあるんです。最近、ノンアルコールビールってよく見るじゃないですか?
三松:ありますあります、はい。
久末:晩酌のときにコップ4杯のビールを毎晩飲み続けてもらうという実験をしたんですね。
で、ひとつのグループにはノンアルコールビール、もうひとつのほうにはアルコールの入ったビール。これを晩酌のときにコップ4杯を3週間。
そうすると、やはりアルコールの入っている方は、2割くらいテストステロン下がってしまったんですね。
三松:びっくりです。
久末:ノンアルコールの方はまったく変わりなかったんです。
三松:や!(取材同行者男性二人を指しながら)君たち君たち君たち!!!
久末:ビールくらいのアルコール度数の低いものでも毎日飲んでいるとそういう形になるんです。
で、やはり深酒するともっともっとヒドイことになって、これはラットとかマウスの実験なんですけれども、酒好きなラットとかはもうどんどんどんどん際限なく飲み続けますので、次の日には完全に二日酔い状態なんですよね。
そうするともうテストステロンが激烈に下がってほとんどゼロなんですよ。
三松:そうなんですか。ということはお酒を飲むとセックス出来なくなるという、結構男性が「酒のせいでできない」とエクスキューズに使いますけれども、あれはそういうことも?
久末:いや、あれはちょっとメカニズムが違うんですね。多少はあるかもしれませんけど、お酒飲んで勃起しなくなるというのは、あれは脳のほうが麻痺してしまうからなんです。
ただ、テストステロンを下げるという作用が非常に大きいので、毎日お酒を飲まれているとかっていうのはよろしくないと思うんですよね。
三松:なるほどです。
久末:だから出来るだけ飲み会を控えてもらうとか、飲み会の席ではノンアルコールビールをちょっと混ぜてもらうとか、そういったことをご家庭でもですね、飲みすぎないように、っていうことをやって頂くといいですね。
ただ、そこであまり口論になるようではよくないので、うま~いことですね。
三松:そうですか。
じゃあEDのパートナーを持つ妻たちに出来ることは、誉めることと栄養管理、お酒をひかえさせること、他にまだありますか?
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