うつ病は心因性EDの原因となる精神疾患の代表例として知られていますが、最近の研究で、うつ病の原因に男性ホルモンの低下が関わっている場合があることが分かってきており、日本性機能学会の学術総会においても報告されました。このため、うつによるEDの治療へのアプローチにも変化が起こりつつあるようです。
うつに関わる新しい病
近年、医学界でとても注目されている男性疾患に、LOH(late-onset hypogonadism)症候群という病気があります。加齢男性性腺機能低下症候群とか、さらに分かりやすく、男性更年期障害などと呼ばれたりもします。これは簡単にいうと、男性の体内で男性ホルモンが低下することで、肉体面・精神面ともに様々な症状が引き起こされる病気のことです。LOH症候群の代表的な症状は、身体面では 関節痛、ほてり、不眠などです。精神面では不安やいらいら、疲労感などが挙げられていますが、うつも発症することがあるそうです。
うつと男性ホルモン低下の関係
また、LOH症候群ではなく、過剰なストレスの影響などからうつ病をわずらう場合も当然あります。しかし興味深いことに、そういった患者さんの男性ホルモン値を調べてみると、LOH症候群と同じように、通常の平均値より男性ホルモン値が下回っているケースが少なからずあることが報告されているのです。つまり、うつより先に男性ホルモンの低下が起こる場合もあれば、うつになることで男性ホルモンが低下する場合もあるということです。そして、どちらのうつ病においても、心因性のEDに繋がる可能性が十分にあるのです。
うつ病治療に男性ホルモン療法
LOH症候群の治療は、減少している男性ホルモン(アンドロゲン)を補充するという方法が取られています。経口薬や注射、塗布約などで男性ホルモン補充を施する方法が最も一般的で、効果が認められています。これにより、男性ホルモンの低下によって失われていた活発性が心身ともに取り戻されるため、うつ症状改善に効果があるのです。驚くべきことに、男性ホルモン治療を行っていない場合であっても、うつ症状が改善したことで、体内の男性ホルモン値が上昇したとう報告もなされています。このように、うつの発症や改善には男性ホルモン値の増減が密接に関わっていることが分かってきているのです。
うつ病によるEDの改善にも期待
以上のことから、うつ病が原因のED症状にも、男性ホルモン治療で改善がみられる可能性があることが言えます。もちろん、実際に男性ホルモン補充療法を行ったことで、うつ病と心因性EDが回復したという例があることは既に報告されています。ということは、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬の服用で、心因性EDに目立った改善が認められないとなった場合に、違うアプローチの治療法として有力な候補になり得るということです。今後、アンドロゲン補充による男性ホルモン療法が、うつ病を治療したり、うつ病による心因性EDを治療する場合の、新たなスタンダードになる可能性も十分にあるのです。