久しく新薬の登場がないED治療薬の世界において、新たな選択肢の登場につながるかもしれない研究が発表され、注目を集めています。
先月、岡山県倉敷市で開催された日本性機能学会の第22回学術総会において、名古屋市立大学大学院薬学研究科の研究グループと、協和発酵バイオ株式会社による共同研究チームが、ED治療におけるシトルリンの有用性について発表しました。
新たな着眼点のED改善策
同研究グループは、勃起を維持する際に必要となる、メッセンジャーとして働く伝達物質(一酸化窒素)が体内で不足することでED症状が引き起こされるケースが報告されている点に着目し、シトルリンと呼ばれるアミノ酸の利用を考えたそうです。一酸化窒素は血管の拡張や血流の維持に重要な役割を持っており、シトルリンには一酸化窒素の産生を高める働きがあるため、これを経口摂取することにより、ED症状の改善効果が期待できるのだそうです。
去勢ラットで効果証明
その考えはラットを用いた実験においても既に証明されており、シトルリン飲水を4週間投与した去勢ラットと、投与されていない去勢ラットとでは、電気刺激で勃起をさせた場合の海綿体内部の血圧増加に違いがみられるそうです。シトルリン飲水を4週間投与した去勢ラットのほうが、投与されていない去勢ラットに比べ、海綿体内の血圧が増加傾向を示す結果が得られたと発表されています。このことから同研究グループは、研究の結論として「ED症状で悩む人にとって、シトルリン摂取は有用な改善策となり得る」と位置づけています。
ED症状の改善が目的ではないものの、既にシトルリンのサプリメントなども一般流通している点などを考え合わせてみても、既存のED治療薬よりも比較的手軽に使用できる新たなED治療薬、もしくはその補助的な薬が生まれる可能性は、十分に考えられるのではないでしょうか。
実用化にはまだ時間がかかるのかもしれませんが、今後の研究結果にも一層の注目が集まることになりそうです。