みかんさん(34歳)からの相談
主人が腹膜透析をしています。透析を始めたのは2年前ですが、その頃から全然勃起しなくなってしまったようで、透析が原因だと思っています。今は病院でED治療を行っています。
透析が原因で主人もかなり落ち込んでしまって覇気もなくなってしまっています。
主人は40代ですが私は30代なのでまだまだセックスを楽しみたいと思っています。病院でのED治療以外で私に出来ることはありますか?
主人が元気を取り戻すために、私はどうすれば良いでしょうか。
三松真由美 氏からのアドバイス
相談者さんのお悩みは、だんな様のED問題というより、まず透析による気持ちの落ち込みを少しでも上向きにすることが第一歩だと思います。
透析とEDの関係性につきましては私は知識がありませんので腎臓内科医の松本昌和先生にお伺いしました。参考にしてみてください。
二松 「松本先生、透析を受けておられる男性患者さんにEDの症状は見受けられますでしょうか」
松本 「透析患者さんは我が国に30万人以上いるとされており、 その数も年々増加し続けています。
国民皆保険制度の恩恵もあり、透析療法を受けられる患者さんの割合は他国に比べて多く、その技術や安全管理も優れているために透析患者さんの生命予後(寿命)は延伸しています。
それとともに患者さんの日常生活の質もより高められるようになりましたが、実に透析されている患者さんの半数以上はEDといわれています。
この問題が患者さんの生活の質の低下に大きく影響しているともいわれています」
二松 「そうですか、今回のご相談者のだんな様も落ち込みがちで覇気がないということです。なぜ、透析はEDの原因になりうるのでしょうか」
松本 「まず、透析導入に至る原因疾患で1位となっている糖尿病がEDに影響をおよぼすと考えられています。
糖尿病は高血糖状態が持続する病気であり、全身のなかでも末梢の細い血管に障害を与えます。
この血管障害、そして3大合併症のひとつである神経障害(自律神経障害)が影響し、EDを発症すると考えられます。 次に透析療法そのものがEDの原因になるとも考えられています。
慢性腎臓病に合併する貧血、酸化ストレス亢進による一酸化窒素の合成異常、自律神経の異常や、性ホルモンであるテストステロンの分泌障害、透析による循環血液量の変化などが複合的に影響している可能性も考えられています。
また、腹膜透析の場合は、腹腔内に体外から透析液を入れるためのカテーテルが腹部前面に留置されております。
不潔に扱うと腹膜炎になってしまうために心理的な緊張感が絶えず伴うことも一因として考えられるでしょう」
二松 「なるほど、血管障害や男性ホルモンの分泌障害など様々な要因がEDを誘発するのですね。
パートナーが透析療法をするようになった場合、奥様は気持ちの部分でもケアしてさしあげないといけませんね。」
松本 「そうですね。 ご家族の観察とケアは大切です。透析患者さんにおいては、内服薬の代謝が健常者とかわってきますので、内服療法においては担当医と相談しながら少量から適量かどうか、副作用がでていないかを観察することが必要です。
透析食の食事療法の制限を守りながら抗酸化作用のある食品、ビタミンEの摂取などに心がけるといいでしょう。
また、腹膜透析カテーテルの清潔操作や扱いを奥様も理解し、十分注意しつつ、透析患者さんの直面するED問題に共感することでご本人のもつ心理的な緊張をほぐしてあげることも肝要です」
二松 「ありがとうございました」
さて、相談者さんがセックスを楽しみたいという気持ちは重々わかりますが、まずだんな様が「妻に強要されている」と感じないようなナチュラルなタッチング、マッサージなどからスキンシップを多くとるよう心がけてください。
セックスの定義を「勃起→挿入」にこだわらず、気持ちを解きほぐしリラックスする時間をもうける事から始めてみましょう。
現在のだんな様は、落ち込んでおられる状況ですので、まずは平常心を取り戻すようサポートしてあげてください。
一緒に音楽を聴いたり、アロマを選んでみたり、恋人達がするようなラブアクションに立ち戻って、だんな様の気持ちを上向きにしてゆきましょう。
まずは小さな一歩からです。
取材協力:御徒町腎クリニック 松本昌和院長先生
http://www.o-jinc.com/