最近、カテキンとED治療薬の併用に高い抗がん作用があることが、九州大の研究チームの発表で分かり話題を集めました。これはどのようなメカ二ズムなのでしょうか。また、これによってED治療やED治療薬にどんな影響があるのでしょうか。
カテキンの一種とED治療薬で高い抗がん作用
今回、カテキンとED治療薬の併用に抗がん作用があることを発見したのは九州大大学院農学研究院の立花宏文教授らの研究チームで、研究成果は米国の医学誌電子版にも掲載されました。立花教授らの研究成果によると、緑茶に含まれるカテキンの一種とED治療薬を併用すると、正常な細胞はそのままに、がん細胞のみを殺して高い抗がん作用を発揮するとのことです。
同教授のチームは2004年の段階で「エピガロカテキンガレート(EGCG)」と呼ばれるカテキンの一種が、がん細胞を特定して殺す働きがあることを解明しており、今回はさらに、EGCGの抗がん作用を阻害する酵素(PDE5)があることに着目したとのこと。ED治療薬には、このPDE5の働きを抑える効果があったため、EGCGにED治療薬を併用してみたところ、高い抗がん作用を確認することができたそうです。
EDと関連の深い前立腺がんにも効果
EGCGとED治療薬の投与効果について、ヒトの乳がん細胞を移植したマウスで実験してみたところ、がん細胞が死滅する効果が確認できたとのことです。また、同教授らのチームは、多発性骨髄腫や胃がん、膵臓がん、前立腺がんでも効果が得られたと報告しています。前立腺がんは、EDにも関連の深い病気であり、このEGCGとED治療薬の併用療法が、前立腺がんだけでなくED治療的にも効果があるのであれば、まさに一石二鳥と言えますが、その可能性はあるのでしょうか。
前立腺がんの術後治療に有効!?
前立腺がんを未然に防ぎ、なおかつEDも治療するという一石二鳥の効果を得るのは、現実的には少し困難なことのようです。というのも、EDの発症と前立腺がんの発症に相関性があると断言し難いからです。前立腺がんという病気は自覚症状がほとんどない病気であり、一般的にいわれている前兆症状とは、排尿の困難さや、血尿が出るなどです。しかし、そういった異変に気付いた頃にはがんが進行していることも少なくないため、投薬よりもむしろ切除手術に移行してしまい、がんも未然に防ぎつつ更にED治療もというケースはそれほど多くないのかもしれません。
ただ、前立腺がんが進行してしまった前立腺の摘出手術を行った場合に関しては、術後に性機能が低下することが知られているため、ED治療とがん再発抑制治療の双方が必要になってくる術後段階に、今回発見されたEGCGとED治療薬の併用が高い効果をもたらす可能性は考えられます。しかし残念なことに、術後段階の治療への有用性に関しては、まだ報告がされていないようなので、今後の研究成果に期待といったところでしょうか。
がん治療研究の進歩が、EDや性機能の治療分野においても大きな希望になる可能性があることが、今回の研究からも分かると思います。今後も、医療分野での様々な発見が、ED治療や性機能医学のフィールドとリンクして、全体の進歩や底上げにつながることがあるかもしれません。その発見がもたらす希望には、大いに期待してもいいのではないでしょうか。