リレンザ(抗インフルエンザ薬:ザナミビル)
リレンザ(Relenza)は、有効成分ザナミビル水和物を配合した吸入型の抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)です。
専用の吸入器(ディスクヘラー)を用いて口から吸入するタイプの薬で、有効成分が気道の粘膜に直接届くため、インフルエンザウイルスが増殖する呼吸器へ効率的に作用するのが特徴です。A型・B型いずれのインフルエンザウイルスにも有効であり、治療だけでなく予防目的でも使用が認められています。
1999年にオーストラリアで世界初のノイラミニダーゼ阻害薬として承認され、日本では2000年12月に薬価収載されました。
なお、本ページは薬剤師が執筆しております。
Atsu薬剤師資格をもち、現在でも調剤薬局で勤務しています。また医療雑誌の編集にも携わっております。
※本ページの初稿は薬剤師が執筆しております。メドノア編集部が必要に応じて加筆・修正を行いますが、その際も情報の正確性と信頼性を損なわないよう細心の注意を払っています。
リレンザの概要
- ザナミビル水和物を配合した吸入型ノイラミニダーゼ阻害薬の先発医薬品
- A型・B型インフルエンザウイルスの両方に有効
- 気道に直接作用する吸入薬のため全身性の副作用が少ない
- 1箱5mgブリスター20個入り(治療1コース分)
- GSK(グラクソ・スミスクライン)が製造
リレンザの製造販売元はGSK(グラクソ・スミスクライン株式会社)です。GSKグループは英国に本社を構えるグローバル製薬企業であり、医療用医薬品やワクチンなど幅広い領域で事業を展開しています。
なお、2022年にコンシューマーヘルスケア部門はHaleon(ヘイリオン)として分社化されました。リレンザは同社の感染症領域における代表的な製品のひとつとして、世界各国で使用されています。
| 商品名 | リレンザ(Relenza) |
|---|---|
| 有効成分 | ザナミビル水和物 5mg/ブリスター |
| 内容量 | ブリスター20個 |
| 効果・効能 | ・A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療 ・A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の予防 |
| 用法・用量 | 治療:1回10mg(2ブリスター)を1日2回吸入×5日間 |
| 副作用 | ・下痢 ・吐き気 ・発疹(まれ) |
| 形状・剤形 | 吸入粉末剤(ディスクヘラー使用) |
| ブランド | GSK(GlaxoSmithKline) |
Atsuリレンザは1999年に世界で初めて承認されたノイラミニダーゼ阻害薬です。
同じノイラミニダーゼ阻害薬であるタミフル(オセルタミビル)が経口カプセル剤であるのに対し、リレンザは吸入粉末剤として設計されています。
吸入投与により有効成分が気道粘膜へ直接到達するため、全身への移行は極めて少なく、バイオアベイラビリティは約2%にとどまります。
このため、タミフルで報告されやすい消化器症状(悪心・嘔吐・下痢など)の発現頻度が低い点がリレンザの利点といえるでしょう。
一方で、吸入薬特有の注意点として、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の方では気管支攣縮のリスクが添付文書上で警告されています。
これらの基礎疾患がある方は、リレンザの使用について必ず事前に医師へ相談してください。
また、リレンザのブリスターには乳糖水和物が賦形剤として含まれるため、重篤な乳タンパクアレルギーのある方は使用を避ける必要があります。
リレンザはこんな方におすすめ
- インフルエンザの症状が出始めた方(発症後48時間以内)
- タミフルの消化器系副作用(吐き気など)が気になる方
- 家族や職場でインフルエンザに感染した方がおり、予防したい方
- インフルエンザの流行期に備えて手元に置いておきたい方
リレンザの有効成分について
リレンザには、ノイラミニダーゼ阻害薬であるザナミビル水和物が5mg/ブリスター配合されています。
インフルエンザウイルスは感染した細胞内で増殖した後、ウイルス表面に存在するノイラミニダーゼという酵素の働きによって宿主細胞から遊離し、周囲の細胞へと拡散していきます。ザナミビルはこのノイラミニダーゼを選択的に阻害し、新たに複製されたウイルス粒子が感染細胞表面から放出される過程をブロックすることで、ウイルスの拡散を抑え込みます。
吸入薬として気道に直接投与されるため、インフルエンザウイルスの主な感染部位である呼吸器の粘膜で高い薬物濃度が得られます。
Atsuザナミビルはシアル酸のアナログ(類似体)として設計されたノイラミニダーゼ阻害薬であり、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ活性部位に結合してその酵素活性を阻害します。
同じノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビル(タミフル)は経口投与後にエステラーゼで活性体に変換され全身に分布するのに対し、ザナミビルはプロドラッグではなく、吸入によって活性型のまま気道粘膜へ直接到達する点が大きな違いです。
吸入されたザナミビルのうち約10〜20%が下気道に沈着し、残りは口腔内や咽頭にとどまります。
全身への吸収は極めて少なく、バイオアベイラビリティは約2%と報告されており(リレンザ添付文書)、腎排泄により未変化体のまま消失します。
なお、ザナミビルはインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼに対して選択的に作用するため、一般的な風邪(ライノウイルス、アデノウイルス、RSウイルス等が原因)には効果がありません。
インフルエンザが疑われる場合でも、迅速検査等で診断を確認したうえでの使用が推奨されます。
リレンザの効果・効能
- A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療:発症後48時間以内の吸入で症状の回復を促進
- A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の予防:感染者との接触後の発症リスクを低減
臨床試験では、インフルエンザ発症後48時間以内にリレンザの吸入を開始した場合、プラセボ群と比較して症状の改善が約1から1.5日早まることが確認されています。
ただし、リレンザはインフルエンザワクチンの代替にはなりません。予防の基本はワクチン接種であり、リレンザによる予防投与はあくまで補助的な手段と位置づけられています。
なお、リレンザの予防投与は不活化インフルエンザワクチンの効果に影響を与えないとされていますが、経鼻弱毒生ワクチン(FluMist等)との併用については、ワクチン接種前後2週間は抗ウイルス薬の使用を避けることが推奨されています。
リレンザの使用方法
リレンザは付属のディスクヘラー(専用吸入器)を使用して口から吸入します。治療と予防で用法・用量が異なります。
| 項目 | 治療 | 予防 |
|---|---|---|
| 1回の吸入量 | 10mg(2ブリスター) | 10mg(2ブリスター) |
| 吸入回数 | 1日2回 | 1日1回 |
| 使用期間 | 5日間 | 10日間 |
| 開始タイミング | 発症後48時間以内 | 感染者との接触後36時間以内 |
吸入の手順
- 1. ディスクヘラーにディスクをセットします
- 2. カバーを持ち上げ、ブリスターに穴を開けます
- 3. 息を吐き出した後、マウスピースをくわえて深く吸い込みます
- 4. 同じ操作をもう1ブリスター分繰り返します(1回の治療で2ブリスター吸入)
使用上の注意
- 治療目的の場合、発症後48時間以内に吸入を開始してください
- 症状が改善しても、5日間の吸入を完了してください
- 他の吸入薬(気管支拡張薬など)と併用する場合は、リレンザより先に気管支拡張薬を吸入してください
- 乳タンパクにアレルギーのある方は使用を避けてください(ブリスターに乳糖が含まれています)
Atsuリレンザの吸入は「ディスクヘラー」という専用デバイスを用いて行いますが、正しい吸入手技が薬効を左右するため、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
吸入のコツ: ブリスターに穴を開けた後、口からしっかり息を吐き切ってからマウスピースをくわえ、ゆっくりと深く吸い込みます。
勢いよく吸うと粉末が咽頭後壁に衝突して下気道へ到達しにくくなるため、穏やかで持続的な吸気を意識してください。
吸入後は数秒間息を止め、その後鼻からゆっくり呼気してください。
気管支喘息・COPDの方: これらの基礎疾患がある方は気管支攣縮のリスクがあるため、リレンザの吸入前に短時間作用型β₂刺激薬(SABA)を吸入しておくことが添付文書で推奨されています。
また、リレンザ吸入後に喘鳴や息苦しさが出現した場合は直ちに使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
吸入が困難な方への代替: 高齢者や小児など吸入操作が困難な場合は、経口薬であるタミフル(オセルタミビル)や、1回の吸入で完結するイナビル(ラニナミビル)、点滴薬のラピアクタ(ペラミビル)など、他の抗インフルエンザ薬への変更を医師と相談することも選択肢となります。
リレンザの警告・禁忌・副作用
禁忌(使用できない方)
- ザナミビルに対して過敏症の既往歴がある方
慎重投与
- 気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の方:気管支攣縮のリスクがあります
- 乳タンパクにアレルギーのある方(ブリスターに乳糖含有)
副作用
リレンザで起こる可能性のある主な副作用は以下のとおりです。
- 下痢
- 吐き気
- 頭痛、めまい
- 発疹(まれ)
吸入薬であるため、タミフル(経口薬)と比較して消化器系の副作用は少ない傾向にあります。
重篤な副作用
ごくまれに、以下のような重篤な副作用が報告されています。
- 気管支攣縮、呼吸困難(特に喘息・COPD既往者で注意)
- ショック、アナフィラキシー
- 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)
- 精神・神経症状(異常行動、せん妄等)
Atsuリレンザで臨床上最も注意すべき副作用は気管支攣縮です。
特に気管支喘息やCOPDの既往がある方では、吸入直後に気管支が収縮し、重篤な呼吸困難を引き起こす可能性があります。
添付文書でも「重要な基本的注意」として警告されており、これらの疾患をお持ちの方は使用前に必ず医師へ相談してください。
また、ショックやアナフィラキシーの報告もあるため、吸入後に蕁麻疹・呼吸困難・血圧低下などの症状が現れた場合は直ちに使用を中止し、医療機関を受診する必要があります。
異常行動について: インフルエンザ罹患時の異常行動(突然走り出す、飛び降りようとする等)は、抗インフルエンザ薬の使用の有無にかかわらず報告されています。
厚生労働省は、抗インフルエンザ薬の種類や服用の有無を問わず、インフルエンザと診断された未成年者については少なくとも発熱後2日間は保護者等が目を離さないよう注意喚起しています(厚生労働省「インフルエンザ罹患に伴う異常行動に関する注意喚起」)。
この注意はリレンザに限ったものではなく、インフルエンザ罹患時全般に適用される点をご理解ください。
リレンザの注意事項
- インフルエンザの発症後48時間以内に吸入を開始してください
- 気管支喘息やCOPDの方は使用前に医師にご相談ください
- 5日間の治療を完了してください(途中で中止しないでください)
- 一般的な風邪には効果がありません
- 妊娠中・授乳中の方は使用前に医師にご相談ください
- 高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所で保管してください
- こどもの手の届かない場所に保管してください
リレンザのよくある質問
リレンザとタミフルの違いは何ですか?
リレンザは吸入粉末剤、タミフルは経口薬(カプセル・ドライシロップ)であり、いずれもノイラミニダーゼ阻害薬に分類されますが、投与経路が異なります。
リレンザは気道に直接作用するため全身性の副作用(悪心・嘔吐など)が少ない一方、正しい吸入手技が求められます。タミフルは服用が簡便で小児用のドライシロップ剤もありますが、消化器系の副作用が出やすい傾向があるほか、腎機能に応じた用量調整が必要です。
喘息がありますが使用できますか?
気管支喘息の方は、リレンザの使用により気管支攣縮を引き起こすおそれがあるため、使用前に必ず医師にご相談ください。
使用が認められた場合でも、吸入の直前に短時間作用型気管支拡張薬を使用し、吸入後に呼吸困難が生じた場合は直ちに使用を中止してください。
吸入がうまくできるか不安です
リレンザはディスクヘラー(専用吸入器)を使用しますが、操作自体はそれほど複雑ではありません。
カバーを持ち上げてブリスターに穴を開け、息を吐いてからマウスピースをくわえてゆっくり深く吸い込むだけです。初めて使用する場合は、製品に付属の説明書をよくお読みのうえ操作してください。
予防目的で使用できますか?
リレンザはインフルエンザの予防目的でも承認されています。感染者と接触した後36時間以内に吸入を開始し、1日1回10mg(2ブリスター)を10日間使用します。
ただし、インフルエンザ予防の基本はワクチン接種であり、リレンザがワクチンの代わりになるものではありません。
風邪にも効きますか?
リレンザはインフルエンザウイルスに対してのみ効果を発揮する薬であり、一般的な風邪には効果がありません。
風邪の原因となるライノウイルスやアデノウイルスなどにはノイラミニダーゼが関与しないため、リレンザは作用しません。
リレンザに関連する添付文書等の参考資料
リレンザの有効成分(ザナミビル)に関する参考資料を以下に掲載します。