トビエース(過活動膀胱治療薬:フェソテロジン)
トビエース(Toviaz)は、有効成分フェソテロジンフマル酸塩4mgを含有する過活動膀胱(OAB)治療薬です。膀胱平滑筋のムスカリン受容体を遮断する抗コリン薬であり、尿意切迫感・頻尿・切迫性尿失禁の症状を改善します。体内で非特異的エステラーゼにより活性代謝物5-HMT(5-ヒドロキシメチルトルテロジン)に変換され、膀胱の過剰な収縮を抑制する仕組みです。
徐放性製剤のため1日1回の服用で24時間にわたり安定した効果が持続します。トルテロジン(デトルシトール)のCYP2D6代謝による個人差の課題を克服する目的で開発されたプロドラッグであり、個人間での薬効のばらつきが少ない点が特徴です。
なお、本ページは薬剤師が執筆しております。
Atsu薬剤師資格をもち、現在でも調剤薬局で勤務しています。また医療雑誌の編集にも携わっております。
※本ページの初稿は薬剤師が執筆しております。メドノア編集部が必要に応じて加筆・修正を行いますが、その際も情報の正確性と信頼性を損なわないよう細心の注意を払っています。
トビエースの概要
- フェソテロジンフマル酸塩4mgを含有する過活動膀胱治療薬
- 膀胱のムスカリン受容体を遮断し、尿意切迫感・頻尿・切迫性尿失禁を改善
- 徐放性製剤で1日1回の服用で24時間効果持続
- 1箱28錠入り
- ファイザーが製造
トビエースの製造販売元はファイザー株式会社です。ファイザーは1849年にアメリカで設立された世界最大級の製薬企業であり、日本を含む世界各国で医療用医薬品を展開しています。
| 商品名 | トビエース(Toviaz) |
|---|---|
| 有効成分 | フェソテロジンフマル酸塩 4mg |
| 内容量 | 28錠(1箱) |
| 効果・効能 | 過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁 |
| 用法・用量 | 1日1回4mgを服用(効果不十分時は8mgまで増量可) |
| 副作用 | ・口内乾燥(国内第III相試験で36.5%) ・便秘 ・排尿困難 ・霧視 |
| 形状・剤形 | 徐放錠 |
| ブランド | ファイザー(Pfizer) |
Atsuトビエースは過活動膀胱(OAB)の治療薬で、急にトイレに行きたくなる「尿意切迫感」、トイレの回数が多い「頻尿」、我慢できずに漏れてしまう「切迫性尿失禁」を改善します。
有効成分のフェソテロジンはプロドラッグ(体内で活性体に変換される薬)であり、服用後に非特異的エステラーゼによって活性代謝物5-HMTに変換されます。
この変換過程がCYP2D6に依存しないため、CYP2D6の遺伝子多型(日本人ではPM:poor metabolizerが約0.5〜1%とされる)による薬効の個人差がトルテロジンより小さい点がメリットです。
一方、抗コリン薬共通の副作用である口の渇き(口内乾燥)は国内臨床試験で36.5%と高頻度に報告されています。
こまめな水分摂取やシュガーレスガムの活用などで対処できますが、日常生活に支障が出るほどつらい場合は主治医に相談してください。
トビエースはこんな方におすすめ
- 急な尿意(尿意切迫感)でお悩みの方
- トイレが近くて日常生活に支障が出ている方
- 我慢できずに尿が漏れてしまうことがある方
- 夜間の頻尿で睡眠が妨げられている方
トビエースの有効成分について
トビエースの有効成分はフェソテロジンフマル酸塩です。フェソテロジンはプロドラッグであり、体内で非特異的エステラーゼにより速やかに加水分解され、活性代謝物5-HMT(5-ヒドロキシメチルトルテロジン)に変換されます。
5-HMTは膀胱平滑筋のムスカリン受容体(主にM3受容体)に結合し、神経伝達物質アセチルコリンの作用を遮断します。これにより膀胱の過剰な収縮が抑えられ、膀胱の容量が増加することで尿意切迫感や頻尿が改善されます。
フェソテロジンはCYP2D6ではなく非特異的エステラーゼによって活性代謝物5-HMTに変換されます。5-HMT自体はCYP2D6やCYP3A4による代謝を受けますが、活性体への変換段階でCYP2D6に依存しないため、トルテロジンと比較してCYP2D6遺伝子多型の影響を受けにくいとされています。これがフェソテロジンの薬理学的な優位性です。
Atsuフェソテロジンの活性代謝物5-HMTは、トルテロジン(デトルシトール)の活性代謝物と同一の物質です。
トルテロジンはCYP2D6で代謝されて5-HMTを生成するため、CYP2D6の遺伝子多型を持つ方(日本人のPMは約0.5〜1%)では未変化体の血中濃度が上昇し、副作用リスクが高まる可能性がありました。
フェソテロジンは非特異的エステラーゼにより5-HMTに変換されるため、この問題が回避されています。
なお、生成された5-HMT自体はCYP2D6およびCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4阻害薬との併用には注意が必要です。
この点については「相互作用」のセクションで詳しく解説しています。
トビエースの効果・効能
トビエースの適応症は過活動膀胱における以下の症状の改善です。
- 尿意切迫感 ── 急にトイレに行きたくなる切迫した尿意
- 頻尿 ── 日中8回以上、夜間2回以上のトイレ
- 切迫性尿失禁 ── 急な尿意を我慢できずに漏れてしまう症状
国内臨床試験では、トビエース4mgの服用により1日あたりの排尿回数が有意に減少し、尿意切迫感のエピソードと切迫性尿失禁の回数が改善されたと報告されています。
トビエースの服用方法
トビエースは1日1回4mgを水またはぬるま湯で服用します。
| 1回の服用量 | 1錠(フェソテロジン4mg) |
|---|---|
| 1日の服用回数 | 1回 |
| 増量時 | 効果不十分な場合、1日8mg(2錠)まで増量可能 |
| 服用タイミング | 食事の有無を問わず服用可能 |
| 服用方法 | 割ったり砕いたりせず、そのまま水で服用(徐放性製剤) |
服用上の注意
- 錠剤を割ったり砕いたり噛んだりしないでください(徐放性が損なわれ、副作用が増強されるおそれがあります)
- 重度の腎障害または中等度の肝障害がある方は1日4mg(1錠)を超えて服用しないでください
- 強力なCYP3A4阻害薬(ケトコナゾール、イトラコナゾール等)を服用中の方は1日4mgを超えないでください
Atsuトビエースは徐放性製剤のため、錠剤を割ったり砕いたりすると薬物放出制御が失われ、有効成分が一度に放出されてしまいます。
口の渇きや便秘といった副作用が増強されるおそれがあるため、必ずそのまま水で飲み込んでください。
4mgで効果が不十分な場合は8mgへの増量が可能ですが、腎機能や肝機能の状態、併用薬によっては増量できないケースもあります。
増量の判断は必ず主治医と相談のうえ行ってください。
なお、抗コリン薬による過活動膀胱症状の改善には一定の期間を要することが多く、国内臨床試験では投与8〜12週後に効果が評価されています。
短期間で効果がないと判断せず、まずは4〜8週間程度の継続を目安にしてください。
トビエースの副作用
一般的な副作用
抗コリン薬に共通する副作用が見られます。口の渇き(口内乾燥)が最も高頻度です。
| 副作用 | 症状の詳細 | 頻度 |
|---|---|---|
| 口内乾燥 | 口の中が乾く | 36.5% |
| 便秘 | 排便回数の減少・排便困難 | 1から10%未満 |
| 排尿困難 | 尿が出にくくなる | 1から10%未満 |
| 霧視 | 視界がぼやける | 0.3から1%未満 |
| 頭痛・めまい | 軽度の頭痛やめまい | 1から10%未満 |
重篤な副作用(まれ)
以下の症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
- 尿閉 ── 尿がまったく出なくなる
- 血管浮腫 ── 顔面・唇・舌・咽頭の腫れ
- QT延長 ── 動悸、ふらつき、失神
禁忌(服用できない方)
- フェソテロジンまたはトルテロジンに対してアレルギーのある方
- 尿閉のある方
- 治療されていない閉塞隅角緑内障の方
- 消化管閉塞・麻痺性イレウスのある方
- 胃アトニー・腸アトニーのある方
- 重症筋無力症の方
- 重度の肝障害(Child-Pugh C)のある方
- 重篤な心疾患のある方
Atsu口の渇き(口内乾燥)は最も高頻度に報告される副作用ですが、多くの場合は服用を継続するうちに軽減する傾向があります。
こまめな水分摂取やシュガーレスガムの使用、口腔保湿ジェルの活用などで対処が可能です。
尿閉は抗コリン薬で注意すべき重篤な副作用であり、特に前立腺肥大症を有する男性ではリスクが高まります。
尿がまったく出なくなる、強い下腹部の張りを感じるなどの症状があれば、直ちに服用を中止して医療機関を受診してください。
また、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」では、抗コリン薬は認知機能低下のリスク因子として注意喚起されています。
高齢の方が服用する場合は、認知機能の変化に留意し、定期的な評価を受けることが望ましいでしょう。
トビエースと他の薬との相互作用
トビエースは以下の薬剤との併用に注意が必要です。
抗コリン作用を持つ薬剤
他の抗コリン薬や抗コリン作用を持つ薬剤との併用により、口の渇き、便秘、排尿困難などの抗コリン性副作用が増強されるおそれがあります。
- 三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬(第1世代)、抗精神病薬など
強力なCYP3A4阻害薬
CYP3A4阻害薬との併用により、活性代謝物5-HMTの血中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがあります。
- ケトコナゾール、イトラコナゾール(抗真菌薬)、リトナビル(HIV治療薬)などを服用中の方は1日4mgを超えないでください
CYP3A4誘導薬
リファンピシンやカルバマゼピンなどのCYP3A4誘導薬は、トビエースの血中濃度を低下させ、効果を減弱させるおそれがあります。
- これらの薬を服用中の方は医師に相談してください
トビエースの注意事項
- 錠剤を割ったり砕いたりせず、そのまま服用してください
- 妊娠中・授乳中の方は服用前に医師にご相談ください
- 高齢の方は認知機能への影響に注意してください
- 霧視やめまいが現れることがあるため、車の運転には注意してください
- 前立腺肥大症のある方は排尿困難が悪化するおそれがあります
- 高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所で保管してください
- こどもの手の届かない場所に保管してください
トビエースのよくある質問
トビエースはどのくらいで効果が出ますか?
服用開始から1から2週間で徐々に効果が現れ始め、4から12週間で安定した効果が得られることが多いです。
短期間で効果がないと判断せず、最低4週間は継続してから効果を評価してください。
口の渇きがひどいのですが対処法はありますか?
口の渇き(口内乾燥)はトビエースで最も頻度の高い副作用です。こまめな水分摂取、シュガーレスガムの使用、唾液分泌を促すスプレーの活用などが対策として有効です。
症状がどうしても辛い場合は、医師にβ3受容体作動薬(ミラベグロンなど)への変更を相談してください。β3受容体作動薬は口の渇きが少ない別の作用機序の過活動膀胱治療薬です。
4mgで効かない場合はどうすればよいですか?
4mgで効果が不十分な場合は、1日8mg(2錠)まで増量が可能です。
ただし、重度の腎障害や中等度の肝障害がある方、強力なCYP3A4阻害薬を服用中の方は8mgへの増量はできません。増量の判断は医師と相談してください。
トビエースとデトルシトールの違いは何ですか?
トビエース(フェソテロジン)とデトルシトール(トルテロジン)は、いずれも同じ活性代謝物5-HMTを通じて作用しますが、活性体への変換経路が異なります。
トルテロジンはCYP2D6で代謝されるため個人差が出やすいのに対し、フェソテロジンは非特異的エステラーゼで代謝されるため個人差が少なく、安定した効果が期待されます。
トビエースに関連する添付文書等の参考資料
トビエースの有効成分フェソテロジンに関する参考資料を以下に掲載します。