梅毒検査キット(性感染症セルフ検査)
梅毒検査キット(Syphilis Screen Test Kit)は、梅毒トレポネーマ(TP)に対する抗体を検出するイムノクロマトグラフィー法(サンドイッチ法)を用いたセルフ検査キットです。
指先から少量の血液を採取してテスト装置に滴下するだけで、約15分後に結果を確認できます。検体を検査機関へ郵送する必要がなく、手元に届いたその日に検査を実施できるため、通院が難しい方やプライバシーを重視される方にとって利便性の高い選択肢といえるでしょう。
なお、本ページは薬剤師が執筆しております。
Atsu薬剤師資格をもち、現在でも調剤薬局で勤務しています。また医療雑誌の編集にも携わっております。
※本ページの初稿は薬剤師が執筆しております。メドノア編集部が必要に応じて加筆・修正を行いますが、その際も情報の正確性と信頼性を損なわないよう細心の注意を払っています。
梅毒検査キットの概要
- ご自宅で梅毒の感染有無を確認できるセルフ検査キット
- 指先から少量の血液を採取し、約15分で結果が判定可能
- 検体を検査機関へ郵送する必要がなく、その場で結果が分かる
- JALイノベーション(JAL Innovation)社が製造
梅毒検査キットは、JALイノベーション(JAL Innovation)社によって製造されています。JALイノベーションはシンガポールに拠点を置く医療機器企業であり、親会社であるOK Biotech(台湾)はISO 13485認証を取得した体外診断用医薬品の製造メーカーとされています。
| 商品名 | 梅毒検査キット(Syphilis Screen Test Kit) |
|---|---|
| 内容量 | 1キット(1箱) |
| キット内容物 | ・テスト装置 ・スポイト ・サンプル希釈液 ・アルコールパッド ・ランセット(穿刺針) |
| 検査対象 | 梅毒トレポネーマ(TP)抗体 |
| 検体 | 指先からの血液(少量) |
| 検査時間 | 約15分 |
| 検査原理 | イムノクロマトグラフィー法(サンドイッチ法) |
| ブランド | JALイノベーション(JAL Innovation) |
Atsu梅毒は近年、日本国内で急速に感染が拡大している性感染症です。
国立感染症研究所の報告によると、2023年の梅毒報告数は14,906件に達し、過去最多を記録しました。
かつては特定の集団に限られると考えられていた梅毒ですが、現在は年齢・性別を問わず幅広い層で感染が確認されています。特に20〜30代の女性における報告数の増加が顕著であり、先天梅毒の報告も増えている点は看過できません。
感染初期には痛みのない潰瘍(硬性下疳)が生じますが、数週間で自然に消失するため、「治った」と誤解してしまうケースが少なくありません。
しかし実際には菌は体内に残っており、放置すると全身に病変が広がるおそれがあります。
梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)は、性行為やオーラルセックスを通じて感染します。心当たりのある方は、症状の有無にかかわらず積極的に検査を受けることをお勧めします。
早期の検査は、ご自身とパートナーの健康を守る第一歩です。
梅毒検査キットはこんな方におすすめ
- 梅毒への感染が心配な方
- 病院へ行かずにご自宅で検査を済ませたい方
- 検査結果をできるだけ早く知りたい方
- パートナーのためにも感染の有無を確認しておきたい方
- プライバシーを守りながら検査を受けたい方
梅毒検査キットの検査の仕組みについて
梅毒検査キットは、イムノクロマトグラフィー法(サンドイッチ法)を用いた迅速抗体検査キットです。この方法は、血液中に含まれる梅毒トレポネーマ(TP)に対する特異的抗体を、テスト装置内に固定化された抗原が認識・捕捉し、抗体抗原複合体としてテストライン上に発色反応をもたらす仕組みです。
指先からランセット(穿刺針)で少量の血液を採取し、スポイトでテスト装置のサンプル窓に滴下した後、サンプル希釈液を加えます。
血液中に梅毒トレポネーマに対する抗体が存在する場合は、標識抗原と結合してテストライン(T)に赤紫色の発色があらわれます。抗体が検出されない場合はコントロールライン(C)のみに線が表示され、検査自体が正常に機能していることを確認できます。
検査精度を高めるうえで、検査タイミングは非常に重要です。梅毒トレポネーマに感染した場合、体内で抗体が産生されるまでには一定の期間(ウインドウピリオド)が必要です。
一般的に感染機会から3週間以上が経過した後に検査を行うことで、抗体が十分に産生された状態での検査が可能となり、検出精度が高まります。感染直後に検査を行うと偽陰性となる可能性があるため、適切なタイミングでの使用が重要です。
Atsu本キットが検出するのは梅毒トレポネーマに対する「抗体」であり、病原体そのものを直接検出する検査ではありません。この点は、抗原検出型の検査キット(クラミジア抗原検査キットなど)とは原理が根本的に異なります。
抗体検査であるため、過去に梅毒に感染し治療を完了した方でも陽性反応が出る可能性があります。
梅毒トレポネーマ特異的抗体(TP抗体)は、治療によって菌が排除された後も体内に長期間残存するためです。
したがって、陽性反応は「現在感染している」ことを確定するものではなく、「梅毒トレポネーマへの免疫応答がある」ことを示すものです。
陽性が出た場合は、医療機関でRPR検査やTP抗体定量検査などの追加検査を受け、現在の活動性感染の有無を確認してください。
梅毒検査キットの検査手順
梅毒検査キットをご使用になる前に、同封の取扱説明書をよくお読みください。検査の手順は以下の通りです。
- キットを開封し、テスト装置・スポイト・サンプル希釈液・アルコールパッド・ランセットが揃っていることを確認します。
- 付属のアルコールパッドで指先(薬指が推奨)を消毒し、十分に乾燥させます。
- ランセット(穿刺針)のキャップを外し、消毒した指先にしっかり押し当てて穿刺します。
- 最初の血液をガーゼ等で軽く拭き取り、その後に出てくる血液をスポイトで採取します。
- スポイトで採取した血液を、テスト装置のサンプル窓(S)に1〜2滴滴下します。
- サンプル希釈液のボトルを垂直に持ち、サンプル窓(S)に1〜2滴加えます。
- 平らな場所に置いたまま約15分間待ち、テスト結果の窓に表示されるラインを確認して結果を判定します。
Atsu血液の採取量が不十分な場合、検査結果が正しく表示されないことがあります。
穿刺前に手をぬるま湯で温めたり、指先を心臓より下に下げたりすることで、血液が出やすくなります。
また、穿刺後は指の根元から先端に向かってやさしく搾ることで、十分な量の血液を採取しやすくなります。
サンプル希釈液を加え忘れると検体が正しく展開されないため、手順6は必ず実行してください。
梅毒検査キットの検査結果の見方
検査結果はテスト装置の「テスト結果の窓」に表示されるラインで判定します。判定は検体滴下後約15分で行ってください。
| 線の表示パターン | 検査結果 | 意味・対応 |
|---|---|---|
| C(コントロールライン)と T(テストライン)の両方に線が表示 | 陽性 | 梅毒トレポネーマに対する抗体が検出されたことを示します。現在の感染または過去の感染の可能性があるため、できるだけ早く医療機関(皮膚科、泌尿器科、婦人科、性感染症科など)を受診し、確定診断と適切な治療を受けてください。 |
| C(コントロールライン)のみに線が表示 | 陰性 | 現時点では梅毒トレポネーマに対する抗体は検出されませんでした。ただし、感染初期(ウインドウピリオド内)の場合は偽陰性の可能性もあります。感染機会から3週間以内の場合は、期間をあけて再検査をご検討ください。 |
| C(コントロールライン)に線が表示されない | 無効 | 検査手順に誤りがあったか、キット自体に問題があった可能性があります。新しいキットで再度検査を行ってください。 |
なお、テストライン(T)の色が薄い場合でも、線が確認できれば陽性と判定します。20分を超えてから表示された結果は無効となりますのでご注意ください。
Atsu繰り返しになりますが、本キットはスクリーニング検査であり、陽性反応が出ても「梅毒に現在感染している」ことを確定するものではありません。
医療機関では、RPR検査(非トレポネーマ検査)とTP抗体検査(トレポネーマ検査)の2種類を組み合わせた「梅毒血清反応検査」によって確定診断が行われます。
RPR検査は活動性感染の指標となり、治療効果の判定にも用いられます。
陽性反応が出た場合は自己判断で治療を始めず、必ず医療機関を受診してください。
梅毒について
梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌が原因で起こる性感染症です。性行為やオーラルセックスを通じて感染し、近年は日本国内で報告数が急増しています。
梅毒の病期と主な症状
梅毒は感染からの経過期間によって症状が変化していくことが特徴です。以下のように4つの病期に分類されます。
| 病期 | 時期の目安 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 第1期 | 感染後約3週間 | 感染部位に痛みのない潰瘍(硬性下疳)やしこりが出現。数週間で自然に消失する |
| 第2期 | 感染後数か月 | 全身の皮膚に発疹(バラ疹)、発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどが出現。これらも自然に消退する |
| 潜伏期 | 第2期以降 | 自覚症状はないが、体内に菌が残存。他者への感染力がある場合もある |
| 第3期 以降 | 感染後数年〜数十年 | ゴム腫、心血管系の障害、神経梅毒(認知機能障害、麻痺等)など、重篤な臓器障害に進展するおそれがある |
感染経路
梅毒は主に以下の経路で感染します。
- 性行為(膣性交、肛門性交、オーラルセックス)による粘膜や皮膚の接触
- 感染者の潰瘍や発疹部位との直接接触
- 母子感染(妊婦から胎児への垂直感染)
早期発見・早期治療の重要性
梅毒は第1期・第2期の段階であれば、ペニシリン系抗菌薬による治療で治癒が可能です。しかし、症状が自然に消失する特性があるため、治療の機会を逃してしまうケースが少なくありません。
放置して第3期以降に進行すると、心血管系や中枢神経系に不可逆的な障害をもたらすおそれがあります。また、梅毒に感染するとHIV感染のリスクが約3〜5倍に高まるとされており、他の性感染症との重複感染にも注意が必要です。
こうしたリスクを避けるためにも、感染の不安がある場合は早期に検査を行うべきです。
梅毒検査キットの使用上の注意
使用前の注意
- 使用前に必ず取扱説明書をよくお読みください
- 使用期限を確認し、期限切れのキットは使用しないでください
- アルミ包装が破損している場合は使用しないでください
- 本品は体外診断用です。内服したり目や傷口に入れたりしないでください
- 感染機会から3週間以上経過してから検査を行ってください。ウインドウピリオド内の検査は偽陰性のリスクがあります
検査時の注意
- ランセットは使い捨てです。再使用しないでください
- 穿刺は必ずアルコール消毒後に行ってください
- サンプル希釈液が目や皮膚に付着した場合は、直ちに水で洗い流してください
- 判定は検体滴下後約15分で行ってください。20分を超えた判定は無効です
検査後の注意
- 陽性が出た場合は、必ず医療機関を受診して確定診断を受けてください
- 陰性であっても感染機会から3週間未満の場合は、期間をあけて再検査をご検討ください
- 使用済みのキット一式は感染性の可能性があるものとして、ビニール袋に入れて密封し、自治体のルールに従って廃棄してください
- 検査キットはお子様の手の届かない、湿気や直射日光を避けた2〜30℃の場所に保管してください
- 本キットはスクリーニング検査です。確定診断には医療機関での検査が必要です
梅毒検査キットのよくある質問
検査はいつ行うのが最も精度が高くなりますか?
感染機会から3週間以上経過した後に検査することが望ましいでしょう。梅毒トレポネーマに対する抗体が体内で十分に産生されるまでには一定の期間が必要であり、この期間内に検査を行うと偽陰性となる可能性があります。
より確実な結果を得るためには、感染機会から4週間以上経過してからの検査をお勧めします。
検査結果はどれくらいの時間で分かりますか?
検体を滴下してから約15分で結果が判明します。テスト装置の結果窓に表示されるラインで陽性・陰性を判定できます。
ただし、20分を超えてからの表示は無効となりますのでご注意ください。
過去に梅毒の治療を受けたことがあります。陽性になりますか?
過去に梅毒に感染し治療を完了した方でも、陽性反応が出る可能性があります。本キットが検出するTP抗体は、治療後も体内に長期間残存するためです。
治療歴のある方が陽性反応を確認した場合は、医療機関でRPR検査を受けることで、現在の活動性感染の有無を確認できます。
陰性でも感染していることはありますか?
感染初期(ウインドウピリオド内)の場合、抗体が十分に産生されておらず偽陰性となることがあります。感染機会から3週間未満の段階で検査を行った場合は、期間をあけて再検査することが推奨されます。
陰性であっても症状がある場合や不安が解消されない場合は、医療機関での精密検査をご検討ください。
陽性が出た場合はどうすればよいですか?
できるだけ早く医療機関(皮膚科、泌尿器科、婦人科、性感染症科など)を受診してください。この検査キットはスクリーニング目的であり、確定診断には医療機関での血清反応検査が必要です。
梅毒は早期に発見すればペニシリン系抗菌薬で治療可能な感染症です。また、パートナーへの感染も考えられるため、お互いに検査・治療を受けることが重要です。
血液の採取は痛いですか?
付属のランセットによる穿刺は一瞬のチクッとした痛みがある程度です。採血量もごく少量であり、大きな負担はありません。
痛みが心配な方は、穿刺前にぬるま湯で手を温めておくと血行が良くなり、少量の穿刺で十分な血液を採取しやすくなります。